一途な彼は俺様モンスター
「空翔っ…」


痛々しい空翔の姿を見ると、思わず声が出てしまい、いてもたってもいられなくなる。




「空翔様なら大丈夫デス。ほら見てください」

「え?」


バネちゃんが冷静にそう言い、私はまた空翔に目をやると…

地面に足をついていた空翔が立ち上がり、体から赤い妖気のようなものが出て、その直後…空翔の体の傷が回復した。




「す、すごい!」

「あれくらいの傷、ヴァンパイアならすぐ回復します!」

「そっか!」


そうだよ…モンスターは、自分のキズを妖力で治すことも可能だった。





バリバリバリバリっっ



傷が癒えると、ものすごい早さで空翔の手に、また黒い稲妻が走る。





「次は当てる…」


空翔の目が赤く光ると、まるで獲物を捉えたハンターのような顔をして、紙神に突っ込んで行った。




バキッッッっ!!!!!


ドゴーーーーーン!




紙神は空翔の攻撃をもろ受けて、地面に倒れる。紙神の体からは白い煙が上がり、まるで小火が出ているようだ…





「くっ……」


紙神は苦しそうな顔をしていて、胸や口からは血が出ていた。




「さっきのあのパワーはどうしたの?」


私の血を飲んで、さっきは空翔の攻撃を受けても倒れなかったのに…




「きっと…浅海様の血の効き目が短いのでしょう…飲んですぐならそのパワーは発揮されるが、持続はしないというわけデス」


バネちゃんは、空翔と紙神の様子を見ながら口を開いた。




「ずっと続かないってこと?」

「そうデス。浅海様の血が、モンスターに力を与えてくれるのは確か…けれどそれはあくまでもごく一部の浅海様の血を体に完全に取り込める強いモンスターだけ。紙神のような元々弱いモンスターには、持続性はなく一時的なものデス」

「なるほど…」


私の血の力は…紙神には一瞬しか発揮しない。だから最初の空翔の一撃には耐えられたのね…





「じゃあ、もう楽勝で紙神に勝てるってことだよね?」

「イエ…あれを見てください…」

「?」


バネちゃんの目線を辿ると…紙神が懐からまた私の血を出して、ガブガブと飲んでいるところだった。

私の血を摂取した紙神の体は、すぐ回復する。




「あ、あれ…」

「浅海様の血を飲んで…ダメージを回復しているんデス」

「そ、そんな…」


紙神の胸の傷は消え、さっきの余裕の笑みをまた浮かべ、完全に回復している…





「パワーを得ることができなくても、浅海様の血がある限り…何度でも回復可能。浅海様の血は、力を与えるだけでなく、傷を癒す力もあるんですから…これは厄介デスね…」


唇を噛み締めるバネちゃんに、返す言葉がなくなってしまった…

胸騒ぎは…これのことだったの…?
< 172 / 202 >

この作品をシェア

pagetop