一途な彼は俺様モンスター

楓雅の話によると、真由子さんにモンスターの医療を教えたのはマサシおじいちゃんで、最初はあまり乗り気ではなかったらしいが、真由子さんの真剣な想いが伝わって、行く行くは自分の跡取りのような存在になって欲しいと思っているらしい。

だから、マサシおじいちゃんと真由子さんには強い絆があり、それも含めて親子のような関係でもあるのかもしれない…





「コホン…」


咳をするマサシおじいちゃん。それが話してくれる合図だとわかり、私たちはマサシおじいちゃんを見つめる。





「空翔はもう飛べん…翼にかなりの損傷があった……」

「えっ…」


楓雅は思わず立ち上がり、私は何も言えずに黙りこくってしまった…

本当に驚いたとき、人は声が出なくのだろうか…とにかく私の声は、喉の奥深くに沈んでしまったようだった。


マサシおじいちゃんは辛そうな顔をしながらも、少しためらないながら続けた。






「…左側の翼は折れ……右側はかろうじて動かせるものの、やはり傷は深い…」

「…ということは……空翔はもう…」


楓雅は声を震わせながら聞いた。









「…飛ぶことは出来ん…」








胸がズキンっと痛む。


そして目頭が熱くなる…一気に涙が溢れた。隣にいるバネちゃんも泣いている。






「ヴァンパイアは翼をケガすると、その妖力は激減してしまう」

「そんなことわかってるよ…」


楓雅は力が抜けたように、へなへなと椅子に座った。そして目を潤ませて、下をうつむいた…






「あいつ…昔っから無理して…自分のことを後回しにしちまうんだよ…俺はそれがガキの時から心配だった。空翔が無理しないかどうかハラハラしてた……でもマサシに会って安心したんだ…マサシがいれば、あいつがどんな大怪我したって治してくれるって…」


ボロボロと楓雅の目から涙が溢れる。こんな楓雅は初めて見た…






「治してくれよ！マサシなら治せるだろ！！今まで俺らの病気やケガは全部治してくれたじゃねえか！なあ、頼むよマサシ！」


楓雅がマサシおじいちゃんに駆け寄り、泣きながら体を揺すった。





「空翔はヴァンパイアの生き残りの中で、一番強くて優秀なんだよ…なぁマサシ…頼む……空翔を助けてくれよ、俺の兄弟を……助けてくれよっ」

「楓雅…」


真由子さんが楓雅に近寄り、涙を流しながら寄り添うように後ろから抱きしめた。