一途な彼は俺様モンスター
空翔があきらめないでいてくれたから、私がいるんだよ。




「なぁ…」

「ん?」


空翔が私を呼び、私は顔を上げて空翔を下から見上げた。





「…血が足りなくなった」


まるでお腹が鳴った時のような顔をして、私を見下ろす空翔。



「こ、ここで…?」

「うん」


ヴァンパイアは1日に何度か、人間のパートナーの血が欲しくなる…ヴァンパイアの舌は特殊な構造になっていて、人間の体を舐めるだけで血を吸うことができる。




「ちょ、ちょっとだけだよ?早くしてね」


肩下まである髪を後ろにはらい、首元を空翔に見せると…




「そこじゃないって」

「へっ?…んっ」


空翔は横に背けていた私の顔をグイッと自分の方に向け、やや強引にキスをしてきた。

ヴァンパイアの舌の構造は特別。人間の体であれば、どこでも血を摂取できる…もちろん唇でも。




「もう…」

「お前無防備過ぎ」

「そっちが強引なの!」


こんな山奥ですると、なんか愛引きしてるみたい…いけないことしてるってゆうか…してないんだけどね!




「せっかく来たんだし、俺がガキの時に住んでた小屋にでも行ってみるか」

「まだあるの…?」

「当たり前だろ?マサシがたまに行って掃除とかしてくれてる…あれは俺の原点だからな。一生取り壊さないつもり」

「そっか」


そうだよね。あそこは空翔と楓雅が幼い頃過ごした場所。2人で生活して、マサシおじいちゃんに武道を習って修行してたんだ。




「今夜はあそこで過ごすか…まさかあの小屋でお前と一夜を共にする日が来るとは思ってなかったぜ…」


空翔の一夜を共にの言い方が、すごく意味深でいやらしく聞こえる。私は小声で「バカ」とつぶやいた。




「とにかく行くぞ!つかまれ」


また翼を広げ、空翔は私を抱えて空に飛び出す。私は風を受けながら、空翔に必死でしがみついた…




ずっとあなたについていくよ…

振り落とされないように、ちゃんとつかまってるから…




「腹へったな…デリバリーって、こんな山奥まで来てくれんの?」

「ハハハ、来ないでしょー」




そして、私は隣でずっと笑ってるよ…

永遠にあなたのパートナーだから…




end
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