一途な彼は俺様モンスター
「どうして、私がオレンジジュースが好きって知ってるの…?」

「空翔様から聞いたんデス!」






空翔さんから…?






「浅海様は、子供の時からオレンジジュースが好きでよく飲んでたって…」

「…!」


子供の時から…?




あれ?

私子供の時…


オレンジジュース、よく飲んでた?

お兄ちゃんとよく飲んでたのは、お茶だったけど…


でも、オレンジジュースが好き。

子供の頃も…飲んでた…よね?


けど、隣にいるのは…お兄ちゃんじゃない。


もっと違う男の子…






「…浅海様?」



っ!


記憶の深いところまでたどっていたら、バネちゃんが私を不思議そうに覗き込んだ。





「ごめん、ちょっと考え事…ご飯食べよっか」

「ハイ♪」


私とバネちゃんは、お昼を食べることにした。






「ねえ…バネちゃんと空翔さんて、どれくらいの付き合いなの?」


バネちゃんが作ってくれたおにぎりを食べながら、私は気になっていたことをバネちゃんに聞いた。





「もうずいぶん経ちますよ~ボクが産まれてすぐですからね」

「赤ちゃんの頃から…?」

「ハイ。空翔様は、ボクの命の恩人なんです。ボクが生まれたすぐ、ボクらの一族の住みかを、他のコウモリたちが攻めてきたんデス…ボクの両親は逃げるのに精一杯で、赤子のボクを連れていくのを諦めた…でもボクは、コウモリたちから必死で逃げて…気がついたら、人間たちの住む街にいました」


バネちゃんに、そんな過去があったんだね…





「弱りきって動けなくなっているボクを、拾ってくれたのが空翔様デス。すぐにボクを家に連れて帰ってくれて、介護してくれました。そしてケガが治ったら、『ここに住め』と言ってくれたんデス」

「そうだったの…」


バネちゃん、いつも明るくしてるけど…

そんなことがあったなんて、気の毒だな…


まだ子供なんだもん、お母さんや仲間に会いたくなるよね。





「ボクはモンスターだから、あの日赤子だったボクのことを…人間は見えないし、気付かない。だからあのとき、たまたま同じモンスターで、ボクのことが見える空翔様が通りかかってくれて、本当に良かった…空翔様がいなかったら、今のボクはいません」

「バネちゃん…」
< 71 / 202 >

この作品をシェア

pagetop