一途な彼は俺様モンスター
目からは、次々と涙が溢れ出す…



微力な私が、命を救った…


自分にでもできることがある。


それが、こんなにも嬉しい…





「…お前は取り柄がないわけじゃない。昔からその血の能力があったんだから…今は記憶が消されてるから、それを忘れてるだけだ」


私の手首を、包帯で巻く空翔さん。






「でも…お前がナイフで手首切ってるところ…出来れば見たくねえよな。これから人の命救うのに、お前は自殺行為かよ?みたいな…」

「…ふ」


空翔さんの言葉に、思わず吹き出してしまった…




「なにかいい方法があればいいんだけど。自殺行為以外で…」

「フフ、そうですね」

「でも今日のお前は、すげえ立派だったんだから…自分をほめてやれよ。お前の体を流れる血液は、暗いことだけじゃなく…いいことにも使えたってことかんだからな」

「…!」


空翔さんの言葉で、私がお兄ちゃんと呼んび、一緒に住んでいたあのモンスターの顔が思い浮かんだ。




あの人は、私の血を利用していた…

私の血をこっそり採取して、それを飲み…力をつけていた…


ちょっと…

この体に流れる血が、憎かった…


なんでこんな血を持ってるんだろう、私って…

こんな血液さえ体に流れてたらって…

考えちゃって、眠れない夜もあった…



でも、人の命を救えることのできたこの血液を…やっぱり憎むことなんてできない。


この血液のおかげで、あの子の命は助かったし…

こうやって、空翔さんたちとも出会えたんだから…




「…そうですね」


私がポツリと言うと、手首の手当ては終わっていた…

お礼を言うと、空翔さんは優しく微笑んでくれた。



胸が高鳴った…






ちょっぴり大人になった夏…

そして、自分と向き合えた日だった…
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