愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 この距離間隔、耐えられない。

 早く離れて欲しい。

「あ、有栖川さん近いです」

 振り向いて誉を見ることは出来なかった。

 振り向けば、彼の唇に自分が触れてしまうのがわかっていたから。

「ごめんね。目が疲れてて画面がよく見えなかったから」

 悪びれもせず彼は謝罪するが、離れる気配はない。
 
 こいつわざとやってるんじゃないでしょうね?

「あの……訂正箇所はもうないですよね」

「ああ。それでいいよ。後でファイル送っといて」

 優しく告げると、誉は立ち上がって私から離れた。

 だが、この時かすかに彼の唇が私の髪に触れた気がした。

 びっくりして振り返ると、彼は片山くんと談笑している。

 私の気のせい?

 考え込んでいたら、午後はずっと外出中だった西島さんが戻ってきた。

「これ、誉と俺からの差し入れ」

 クリスマスケーキにチキンに、ピザ、そしてドンペリのピンクのシャンパンを机の上に並べる。
< 11 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop