愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 非常灯の薄明かりの中辺りを見渡すと、隣のベッドに誉がいた。

 出血した頭には包帯が巻かれているようだ。

 でも、意識はあるの?

 もう消灯の時間なのか状況がわからない。

 ベッドから下りて誉の方にすぐに駆け寄る。

「誉」

 名前を呼びながら誉の頬に触れた。

 温かい。

 良かった。

 死んではいない。

 神様どうか私から彼だけは奪わないで下さい。

 もう独りぼっちは嫌なんです。

 彼がいない世界は嫌なんです。

 お願いです。

 私の命で良ければいつでも差し上げます。

 でも、誉は連れて行かないで下さい。
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