愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 受け取らずにコーヒーを顔にぶっかけてやろうかと何度も思った。

 コーヒーフィルターにコーヒー豆を入れ、お湯をゆっくり注ぐ。

 いつもなら薫り高いコーヒーの匂いがするはずだった。

「・・・なんか気持ち悪い」

 思わずしゃがみ込んでハンカチで鼻を押さえる。

 おかしい。

 コーヒー豆の消費期限もう過ぎてたっけ?

 取り敢えず、ハンカチを鼻に当てたままコーヒーを誉に出す。

 また淹れ直せって言われたら、今度こそ奴の顔にぶっかけてやろう。

「そのハンカチは何なの?」

 誉が怪訝な顔をする。

「何となく」

「嫌がらせか?」

 そう呟いて誉はコーヒーを口にする。

「うん、今度は合格」

 満足気に笑うと誉は書類に目を通し始めた。
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