愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 相変わらず策士だ、こいつは。

「それじゃあすぐに帰れないじゃない。それに会社にも行けない。どうしてくれんのよ」

 この格好じゃベッドから出ることさえ出来ない。

「会社のことは心配ない。それよりも瑠璃の話をしようか。聡から捜索願が出てるけど、うちにいるって報告した方がいいのかな?」

 誉が悪魔の微笑を浮かべる。

 やっぱりその話題に触れるの?

 見逃してくれる訳……ないよね。

悔しくて誉をキッと睨みつける。

 聡というのは私の兄のことだ。

 妹思いの優しい兄は、今はニューヨークにある私の祖父が経営している関連会社に赴任している。

 可愛い奥さんもいて、その奥さんは妊娠中だ。

 兄にはもう余計な心配をかけたくない。

「いいのかな?」

 誉は悪魔の微笑を浮かべながら、またノートパソコンの電源をオンにしてスカイプを接続しようとした。
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