愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 それが私の心臓に穴が開く原因にもなったらしい。

 父は母を責めたそうだが、母はそんな父や兄と私を捨てて出て行った。

 それから私の父は、3年前に私と10歳しか変わらない水商売の女の人と再婚。

 後妻は私の存在が邪魔だったのか、私の理解者である兄が渡米するタイミングを見計らって、父を説き伏せろくでもない縁談を押し付けてきた。

 兄がいない早瀬の家は、地獄同然。

 私の居場所などどこにもなかった。

 高倉商事の次男との結納の日、私は早瀬の家を出た。

「だから何?誉には関係ないでしょう!」 

「お前の親父さんの後妻が諦めるとは思えないけど。それに、話は最後まで聞くんだな。うちのじじいが勝手に俺と衆議院議員の伊集院渉の長女との見合いをセッティングした。お互い婚約者がいた方が諦めもつくだろう?有栖川の家も、早瀬の家も。今日の見合いに婚約者として出席してもらう」
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