愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 伊集院議員は歯ぎしりする。

「……若造が。馬鹿にしおって、このままですむと思うなよ。有栖川に便宜を図る話は白紙に戻す」

 議員は拳をテーブルに叩きつけた。

 だが、誉は議員を無視して、横にいる背の高い男性に声をかけた。

「成宮、あのじいさんに伝えておけ。勝手な真似はするなと」

 成宮というのは誉のお祖父様の第一秘書だ。

 有能で冷酷な男。

 誉のお祖父様はうちの親会社の会長だ。

 秘書室にいたからわかるが、成宮の手腕は凄く、まだ若いのに会長のブレーンの一人だ。

 会長の出張には必ず同行する。

 うちの会社の重役でさえ、この秘書の成宮にペコペコ頭を下げる。

 過去に彼の進言で首になった重役がいるからだ。
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