愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 このエセ紳士め。

 私にはその笑顔は通用しない。

 大丈夫。

 多分、彼は私の事なんて忘れてる。

 彼から視線を外し自分に言い聞かせる。

 だが、この時私は知らなかった。

 彼が悪魔の微笑を浮かべていたことを。

 それから会議の準備や来客対応をしていると、あっという間に定時になった。

 だが、クリスマスイブだからといって彼氏のいない私は何の予定もない。

 新しい部署に来たばかりだし、やることはまだまだある。

 備品もチェックしておこうとデスクを離れると、無愛想なイケメンの一ノ瀬くんがコピー機と格闘していた。

「くっそ!使えねーコピー機だな」

「紙詰まりですか?ひょっとして今夜は予定があるとか?」

優しく声をかけると、彼はハッとした顔になり黙り込んだ。

 図星かあ。
 彼氏のいない私としてはちょっとうらやましい。
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