愛しい君~イジワル御曹司は派遣秘書を貪りたい~
 一ノ瀬くんが困惑顔で誉に声をかけて、ドアの方を指差す。

 そこには、鬼の形相の有栖川会長と秘書の成宮がいた。

 会長は持っていた杖でドアをドンドンと叩く。

 よくわからないけれどかなりお怒りのようだ。

「ああ、やっぱり来たか」

 だが、誉は余裕の表情でスタスタと歩いてドアの方へ向かう。

 誉にとっては想定内の事らしい。

「おはようございます、会長。こんな朝早くから何かご用ですか?」

 誉は嫌みなくらいとびきりの笑顔で会長を出迎える。

 一方、会長は誉に向かって何か雑誌を投げつけた。

 運動神経のいい誉は落とさずにそれを受け止める。

 それは、週刊誌だった。

 表紙の見出しには、伊集院議員献金疑惑の文字。

 なんか昨日の今日でタイミング良すぎない?

 ひょっとして誉の奴、私が寝てる間に何かしたの?

「これは、お前の仕業だろう?」

 会長の鋭い眼光が、誉を捕らえる。
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