大っ嫌いなアイツに恋をした。
「は?してないし。あんたが無駄絡みしてくるからウザかっただけ」
「お前は何でそんなに可愛げねぇのかね。俺に構ってもらえるなら女は泣いて喜ぶけど?」
暗闇の中、橘のクスッと笑う声がすぐ隣から聞こえる。
「そーですね。ならあたしも泣いてあげましょうか」
ムカつくから棒読みで言ってやった。
さすがの橘も調子に乗りすぎたと思ったのかピタッと笑うのをやめた。
「……お前さ、まだ好きなの…?アイツのこと」
いきなりそんな低い声が耳元で聞こえる。
暗くて見えないけど、今あたしは肩スレスレで橘の隣に座っているのだと。
そう思うと、急に緊張した。
「……うん、好きだよ。永見先輩のこと」
あのときは、橘のことを忘れたい一心だったけど今は違う。
フられた今だってまだ忘れられずにいる。
重い女なのかな…なんて思ったりするけどまだ好きなんだもん。
なんて……こんならしくない乙女みたいな発言、橘には出来ない。