大っ嫌いなアイツに恋をした。



「み、見たか!?」


「うんっ!見た!見たよっ!」



二人して向かい合い両手を繋いではしゃぐ。

だが、その近い距離に恥ずかしくなって慌てて手を離す。


離したんだけど…



「……た、橘?」



離した手を橘はもう一度引き寄せギュッと握る。


不思議に思って見上げると、橘は何だか思いつめたような顔をしていた。



「あ、あのさ…俺…お前に言いたいことあって」



その真剣そうな瞳にあたしは何も言えずに橘の目を見つめる。



「俺っ、笹原のこと…っ」




そう、橘が口を開きかけたときだった。


遠くからパトカーの音がした────。






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