大っ嫌いなアイツに恋をした。



それは、好きだったから。



橘を嫌いだ、と思えば嫌なところばかりが目立って見えるようになる。

そうすることで、"大っ嫌い"と言うことで橘に対する想いなんて消えると思っていた……


なのに……


垣間見る橘の本当の優しさにあたしは気づいていた。

本当は根が優しいヤツ。

だから一度好きになった。


でも、もうとっくに捨てた想い。


振り返っちゃダメだ

嫌いにならなきゃと……



「お前、何泣いて…」



気がつくと目には涙が溢れていた。


ごめん。

もう、隠しきれないよ……



「橘……っ」



「……フッ、泣くほど俺が嫌いかよ」




腕が離れると冷たいそんな声がした。



< 207 / 415 >

この作品をシェア

pagetop