大っ嫌いなアイツに恋をした。
◇3回目のキス
静かな高台とは違いたくさんの人が溢れる南橋。
花火の時間が迫ると大勢の人が河原に移動して行く。
あたしはその人々に逆らって南橋宮に走った。
たくさんの屋台が並ぶ通りを探しても橘は見当たらない。
橘も屋代さんとどこかに移動したのかな…
橘に連絡しようとするも携帯の充電が既に切れていた。
橘…どこにいるの?
会いたい、会いたいよ────
もう屋台の通りを何往復していたとき、肩にポンっと叩かれた。
「橘っ!?」
振り返ると……
橘じゃない、見知らぬ若い男が数人あたしを取り囲むようにして立っていた。
慌てて避けようとするも、男は道を阻むようにしてあたしの前から離れない。
「ねぇ、キミ一人?」
男の一人があたしに顔を近づけるようにして言う。
「ち、違います。人を探してて…」