大っ嫌いなアイツに恋をした。
「キャッ、たちばな…っ」
体勢を崩し地面に尻餅をついてしまう。
橘はそんなこと御構いなしにあたしを強く抱きしめる。
「……っテメェ、ふざけんじゃねぇぞ」
耳元から低い声が聞こえてあたしは肩を怖ばせる。
「たちばな…」
「心配かけんなよ、バカ」
橘は安堵したようにあたしの頭を優しく撫でる。
「ご、ごめん……でもっあたしは橘に会いたくて…」
そこまで言ってあたしはハッとした。
何言ってんのあたし…!
橘には屋代さんが……
「……俺も、お前に会いたかった」
橘は少し身体を離して、顔が見える距離でそう言った。
切なげなその瞳は何だか艶っぽくて目を逸らす。
「や、屋代さんは…こんなとこにいていいの…?」
そう聞くと、橘は少し顔を顰めた。
顔を上げて橘の顔を見ると月明かりに照らされて橘の左頬は赤くなっていることに気づいた。