大っ嫌いなアイツに恋をした。
橘に応えようと、必死に唇を合わせる。
だけど、力が入りすぎてピアノの椅子からバランスを崩す。
橘を押し倒すような形であたしたちは床に落ちた。
「………」
「………」
静寂の中二人とも、見つめ合ったまま。
あたしはいつになく艶っぽい橘の瞳から目を離せない。
「………美優」
そう、あたしの名前を静かに呼んで
頬に手を伸ばしたとき……
ガラガラ────
本当、いきなりだった。
いきなり、音楽室の扉が開いたと思ったら…
「………あれ、悠月と……笹原?」
その聞き覚えのある声に顔を上げると……
「……っ、永見先輩…?」
驚いた様子の永見先輩と目が合った。