大っ嫌いなアイツに恋をした。
「考えられないんだよね。悠月が笹原に本気だって」
「……どういう意味ですか」
あたしの不安な目を見た永見先輩は躊躇いがちに口を開く。
「前にさ、一人の女の子巡って争いになったんだよアイツと。まあ、俺が悪いんだけどさ…それから俺と悠月は冷戦状態。その女の子は転校しちゃって。悠月は一時停学」
て、停学!?
驚くあたしに永見先輩は続ける。
「停学ってのは、俺を殴ったから。そこまでしなくていいのに、校長は聞かなかった。悠月は本当にその女の子のことが好きだったんだよ。アイツは最後まで口にしなかったけど。だから、笹原に本気だって…俺は考えられないかな」
部活停止ってこれのことだったんだ。
気にくわない先輩でも殴っちゃったんじゃないの?とか適当に言ったけど…永見先輩のことだったんだ。
「でも、橘はあたしのこと本気だって…」
「本当にそうだと言い切れる?」
永見先輩はあたしを壁に追いやる。
本当にそうだと言い切れる?
ううん────言い切れないのかもしれない。
橘は、あたしのどこを好きになったの?
永見先輩の手があたしの頬に伸びたとき、
「そこで、何やってんすか」
そんな声がして、
バスケットボールを脇に抱えた宮村が壁にもたれて立っていた。