大っ嫌いなアイツに恋をした。
グッと拳を握りしめたとき、宮村はそっとあたしの肩を抱き寄せた。
「へぇ?彼女の前で平然とキスしといてそんなこと言えんだなお前。だったら……俺と笹原が二人でいようと何してんようが悠月には関係ねぇだろ?」
まるで、挑発するような宮村の物言いに橘は眉間に皺を寄せる。
「お前……自分で何言ってるかわかってんの」
「ああ。笹原のこと泣かすようなら、俺が掻っ攫うつってんだけど」
宮村がそう言った瞬間、橘が宮村に掴みかかる…
「……っ、やめてっ!」
あたしの叫びも惜しく、宮村は雨で濡れた地面に倒れ込む。
「…俺、悠月怒らすようなこと言ったつもり、ねぇけど」
宮村は口の端に滲んだ血を腕で拭うと、フッと笑った。
「……テメェっ」
もう一度、宮村に突っかかろうとする橘の腕をあたしは強く掴む。
「ムカついたからって…殴っていいってことにはならないでしょ!?永見先輩のことだって…すぐ手を出すなんて…そんなことで解決するとでも思ってんの?……橘のそういうとこ大っ嫌いだよっ」
溢れ出しそうな涙を堪えて橘を見つめると掴んでいた腕を振り払われる。