大っ嫌いなアイツに恋をした。
◆もう大丈夫だから
【美優side】
『ごめん…もう、笹原のそばにはいてやれねぇ────。』
掴んだ手をそっと離される。
いや、嫌だ……
行かないで……!
「イヤぁ───!!」
ガタッと椅子が傾き、あたしは床に倒れこんだ。
「美優!?美優…っ、しっかりして!!」
愛美の声がして、フッと我に返る。
……ここ、教室だ。
周囲を見渡すと、文化祭に向けて準備しているところだった。
「美優、お昼休みからずっと寝てたでしょ?大丈夫…?」
随分寝てしまっていたらしい…
あんな嫌な夢みるなんて……
「無理しないでよ…辛いんだったら、劇も出なくていいんだよ?」
愛美はあたしの手を取って切なげに微笑む。
クラスのみんなは、あたしと橘の関係が終わったことを知っている。
学校に全く来なくなってしまった橘は王子様の役を外されて、代わりに宮村が王子役をすることになったのだ。