大っ嫌いなアイツに恋をした。




「何だ?王子役は譲らねぇよ?」



ふっと笑った顔……

あたしは何度も、何度も…



「ありがと────!宮村がいてくれてよかった!あたし、もう一度橘に会ってくる。もう大丈夫だって…伝えてくる。そんで…一発殴ってくる…っ!」



そう叫んだ声に宮村はハハッと笑う。




「泣いたって、慰めてやらねぇよ?」



「わ、わかってるよっ!じゃ、それだけ…」




宮村に背を向け、歩き出そうとしたとき…




「……笹原の居場所は悠月の隣だけじゃねぇから。いつだって俺のとこ、来ていいから」



振り向けなかった。

その声があまりにも優しくて。



「っ、絶対…宮村の前で泣かないよっ」



意地悪なのか優しいのか…

それでもあたしのそばにいつだっていてくれた。
そんな宮村を利用なんて…絶対出来ないよ。



あたしは振り向かないまま、歩き続けた。




「……頑張れよ、」



そんな彼の声には気づかないまま────。




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