大っ嫌いなアイツに恋をした。
「あ、あの…あたし…!」
「今、悠月出かけてるみたいで〜あの子ったら最近学校行ってないのよ!?どう思う〜?あ、マドレーヌあるの美優ちゃん食べる?」
うっ……これが噂のマシンガントーク…
「あ、あの!ご挨拶遅れてしまってすみません…笹原美優と申します…橘くんにはとてもお世話になって…」
「知ってます。女の子の話、悠月から何も聞いたことなかったけど、美優ちゃんの話はよくしてたのよ」
橘のお母さんはあたしを見てニコリと微笑む。
「あの子…意地ばっかり張ってカッコつける癖あるけど……本当はとても不器用なの。笑っちゃうでしょ?でもね、あたしが言うのもなんだけど…すごく優しいのよ…美優ちゃんにはご迷惑たくさんかけると思うけど、息子のことよろしくね」
切な気に、でもどこか嬉しそうに橘のお母さんは言った。
知ってます。
橘は意地っ張りで、強引で、すぐ感情表に出しちゃうの。
素直じゃなくて、意地悪言うのも…
だけど、アイツの優しいとこも……全部、全部知ってます…っ
あたしは溢れ出しそうな涙を橘のお母さんにバレないよう押し殺した。