大っ嫌いなアイツに恋をした。
それから数時間、橘の帰りを待ったがとうとう帰ってこなかった。
「あの…そろそろあたしおじゃまします…」
「え?いいのよ気を遣わなくたって〜夜ご飯食べていって?」
橘のお母さんはクリームシチューのおたまを持ち上げる。
お母さん…まだいたら…こんな感じだったのかな。
随分早くにお母さんは家を出た。
お父さんと離婚して、今はどうしてるかも知らない。
これ以上、ここにいたら…今度こそ堪えた涙が溢れてしまいそうだった。
「お言葉ですが…失礼します。マドレーヌ…ありがとうございました!」
頑張って作った笑顔に何かを気づいた橘のお母さんはキッチンから出てきて、あたしの手を取った。
「美優ちゃん…いつだってこの家来たっていいんだからね?」
「……ありがとうございました」
あたしは精一杯微笑むだけで、頷くことは出来なかった。