大っ嫌いなアイツに恋をした。
「何、こっち向けよ?」
「む、向けるわけないでしょ!!」
この大浴場だって入浴剤が入っているわけじゃない。
普通の天然のお湯だし…
あたしは隅っこで身体を縮めこむことしか出来ない。
「あ、もしかして、照れてんの?」
「うるさいなっ!さっさと出て行ってっ」
どうもこんなにあたしが不利なんだろ…
早く上がってくれ〜
ひたすら願っていると、チャポンッとお湯が揺れた。
そして、うなじに何かが軽く触れる。
そっと振り返ると、
水で髪が濡れた橘がいて……
いつもより、とてつもなく色っぽい。
何、普通に近づいてきてんの!?
「……な、何近づいて…」
「別に、何も見えねぇから」
橘は低く囁くと、もう一度あたしのうなじに唇を落とした。