大っ嫌いなアイツに恋をした。



笑いを必死に堪えるあたしとは反対に、橘の表情は暗かった。



「お前が倒れたとき、まじで焦った。気づいたら勝手に身体が動いてお前のことここに連れてきてた。」



不意に、橘と視線が混じり合う。

それはいつになく真剣であたしを捉えて離さない瞳だ。


そんな橘の瞳に耐えられなくなって逸らそうとしたとき、橘はあたしの手をギュッと握った。


ドキッと心臓が跳ねる。



「ちょ、何すんの…」



「…心配かけんなよ。お前が元気ねぇと俺まで元気なくなんの」



……何よそれ

心配って別に心配してもらわなくても。


いつもみたいにだせぇって笑えばいいのに。

散々バカにして貶すくせに、何優しくしちゃってんのよ……


そんなことしたってあたしは何も響かないよ。


そう、心では思ってるのに。


一度は好きになってしまったんだ。


いつもはイジワルだけどこの優しいところに惹かれたんだもん。


意識しない、なんて

出来ないよ。




< 76 / 415 >

この作品をシェア

pagetop