大っ嫌いなアイツに恋をした。
「お父さんってば苦しいから離れて!」
あたしは無理やりお父さんを引き離した。
すると、お父さんはあたしの後ろにいる橘を見つけたらしく叫んだ。
「おい、美優!このチャラそうな男は誰だ!?……まさか、彼氏!?」
ああ、始まった。
既にお父さんは橘に敵意むき出しで睨んでいる。
いつものように否定しようとすると、スッと橘があたしの前に立ちはだかった。
「初めまして、橘です。笹原さんとはただのクラスメイトです。お父さんの帰りが遅くなると言うことで、僕が彼女を送りにきました。」
あたしはビックリして言葉が出なかった。
まるで、いつもの橘じゃないみたい。
淡々と丁寧に話す橘はあたしの知る橘じゃない。
……え?
この目の前の人物は誰デスカ?
お父さんも外見と話し方の丁寧さに驚いて何も言えなくなっている。
「では、これで。」
橘はお大事にと一言残すと、歩いて行ってしまった。