お試しカノジョ
「うげぇ!おえぇっ!」
「ちょっと、その反応さすがに傷つくや」
あからさまに顔をしかめ、私は歩美の腕にひっつく。
相変わらずヘラヘラしているヘラ男は隣の彼女を放置して、ゆっくり近づいてきた。
「歩美、行こっ」
「えー、少しくらい話そうよ」
「散れヘラ男!爆ぜろ、クソが!」
「へ、へらお?」
歩美の腕を強く引いてさっさとその場から離れた。
後ろからギャーギャー喚いている女の子の声が聞こえてくるが、知らん。
ヘラ男が貶されて嫌なら、私からそいつを遠ざけてよ。
「………夏子?伊藤くんと知り合いだったっけ」
「全然これっぽっちも知り合いどころか道端に生えてる雑草だよ」
「意味がわからない」
ヘラ男は追いかけてくる様子はない。
ふんっ。
追いかけてきたらあの自慢のフェイスに傷をつけてやるつもりだったけどね。
私たちは日当たりの良いベンチに座り、お弁当を広げた。