お試しカノジョ
夏子は嫌いな人に構うほど、お人好しじゃない
声がカスカスになった。
お水が飲みたい。
しかも最後、ちょっと声が裏返った。
笑われるのかも。
少しビクビクしながら楓くんの反応を待つ。
「うん、僕も大好きだよ」
「楓くん…」
楓くんの顔が徐々に近づいてくる。
「まっ、待って!!」
「……歩美ちゃん?」
「そういうのは、その…まだ早いというかなんというか」
「…クスッ。わかった」
わたしの頭を撫でた後、額にキスをした。
「かっ、楓くんっ!」
「これくらいならいいでしょー?」
「うっ…」
「ふふっ」
幸せそうな表情をする楓くんに、わたしは視線を逸らす。
「そ、それで伊藤くんの話の続きは?」
恥ずかしすぎて、なんとか話題を逸らしたかった。