お試しカノジョ
「あぁ、そのことなんだけどねぇ」
「うん」
わたしの頭から手が遠のいた。
ちょっぴり寂しい。
「冬樹、今回はすごく本気みたいなんだよねぇ。あいつが本気なのって初めてだからさ、協力したいんだよ」
わたしも夏子には恋愛してほしい。
「でも、夏子男嫌いだから…」
「それなんだよねぇ、歩美ちゃん」
楓くんは机に肘を付いて言う。
「夏子ちゃんは冬樹のこと大っ嫌いなのかなぁ」
「…うーん、多分」
結構嫌がってるように見えたけど。
だけど…。
「でも、満更でもないと思う」
「それって夏子ちゃんも冬樹のこと好きってこと?」
「好き…とまではいかないけど」
うん、あれは好きとかじゃないと思う。
「夏子は嫌いな人に構うほど、お人好しじゃない」
「あははっ、歩美ちゃん結構ヒドイこと言うね!お人好しじゃないって」
「えっ、いやっ、そういうわけじゃ」
「大丈夫大丈夫。わかってるよぉ」
夏子はサバサバしてるから、嫌いなものは視界に入れない。
「伊藤くんと会話できてる、ってことはそこまで嫌いじゃないと思う」
幼馴染のわたしが言うんだから、そうだ。