お試しカノジョ
翌朝、わたしは楓くんと登校した。
なんと、楓くんもバス通学で同じ路線だった。
これから楓くんの時間に合わせてバスに乗ろう…。
教室に着いて1人で本を読んでいると夏子がやってきた。
「夏子、おはよう」
「歩美おっはよ!今日早かったんだね」
「…まあ」
楓くんのため、だなんて言えない。
夏子には申し訳ないけど、わたしは夏子より楓くんを選んだ。
という感じになった。
でも今、わたしはとても楽しい。
「…歩美、なんか嬉しそうじゃない?なにかあったの?」
夏子は怪訝そうに聞いてきた。
わたしはハッとして顔を元に戻す。
自覚なかった…。
「そう見える?」
あくまでも平静を装う。
「うん」
真剣な顔で、なにかあったの?と訴える夏子。
隠し事は、しないほうがいいな。
わたしは、楓くんと恋人になったことを打ち明けようと決心した。
「実はね……」
と、そこまで言いかけて、ふと扉の方を見た。
するとそこには楓くんが立っており、こっちを見てる。
しーっ、と人差し指を口にもっていき、内緒だよというジェスチャーをした。
わ、わかった。
「やっぱり内緒」
「えぇ!なにそれー」
ごめん夏子。
わたしはどうやら恋の奴隷みたい…。
なんて、ちょっとクサいな。