お試しカノジョ


『僕も自分勝手だなあ、って思ってるんだけど。これがなかなか直らなくてさぁ』

「うん」

『あ、そこはそんなことないよ!って言ってくれないんだ?』




クスクスと電話越しで笑う楓くん。


わたしは実際にワガママだなあ、と思ったことはないけど楓くんがそう思ってるんならそうじゃないかな。


人は、自分自信を誰よりも知ってるから。




『ごめんねぇ、これからは控えるようにするねぇ』

「わたしは全然大丈夫なんだけど」




でもそうやって言うところが楓くんの良いところ。




『気をつけるー。じゃあまた明日ねぇ』

「うん、おやすみ」

『おやすみぃ』



会話を切って、テーブルにスマホを置く。


夏子に言うのか…。


長年幼馴染みをやっていると、こういうことはなんか緊張する。


親に彼氏を紹介する気分。




「夏子、驚くだろうなぁ」




そう呟くと、再びスマホが動いた。


また楓くんかな?


と思いきや、表示された文字は夏子だった。


なんてタイミングだ。


わたしも、たった今夏子に電話しようと思ってたとこだ。


学校などで直接会って言うのは照れ臭いから。


苦笑いしながらわたしはスマホを耳に当てた。






その数分後、夏子の悲鳴が耳に響くことになる。

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