お試しカノジョ
と、いうことで。
やっとお昼休みになった。
わたしは楓くんの教室に行くと、お弁当を持って待ってくれてた。
「ここじゃあれだから場所変えよぉね」
「どこ?」
「国語準備室だよぉ。そこで冬樹が待ってるからぁ」
夏子にバレる恐れがあるからか、国語準備室まで移動した。
こういうことを言うのもなんだけど。
こうやってコソコソするの楽しい。
「ふーゆきっ」
国語準備室のドアを開けると、伊藤くんが待機していた。
「遅かったね」
「えぇー、そうでもないよぉ。ね、歩美ちゃん!」
「…うん」
ぶっちゃけると、伊藤くんとはあまり話したことがない。
夏子を通してなら何度かあるけど。
「藤森さん、わざわざごめんね」
「全然、大丈夫」
「ありがとう」
なんだか伊藤くんの雰囲気とか喋り方、楓くんと少し似てる。
「ちょっと、2人だけで会話やめてよぉ」
「楓、不安なの?」
「…そのニヤニヤやめてよ。腹立つから」
新たな発見だ。
伊藤くんと話すとき、楓くんはあの可愛い喋り方はそんなにしないみたい。