お試しカノジョ

「夏子男嫌い、なおったの?」

「なんで?」

「伊藤くんと話してたし、楽しそうだったから」




は、はああああ?


どこをどう見たら楽しそうに見えるの?


歩美ってちょっとおかしいときあるよね。


天然っていうやつ?可愛いけどね。




「全然楽しくない。むしろキモい。あ、そうだ聞いてよ歩美」

「聞いてる」

「なんかさー、付き合ってって言われたんだけど」

「誰に?」

「えーと、へら……伊藤?」




で、あってるよね。
歩美もそう言ってたし。




「へえ、そうなんだ」

「ほんとなんであんなのが人気なわけ…。はっ、もしかして歩美もあんなのが好みだったりするの?」




でも歩美って可愛いもの大好きだし、男の趣味もかっこよさより可愛いさを求める気がする。


それにヘラ男はかっこよさ兼可愛いさをもってるやつだ。


悔しいがヘラ男は歩美のタイプに近いやつなのかもしれない。




「伊藤くんはタイプじゃないよ」

「よ、よかった…。そうよね、そんなわけないよね。じゃあ歩美のタイプって誰なの?」




ヘラ男が歩美の眼中になくてよかった!


歩美は可愛いから、ヘラ男から付き合ってと言われても不自然じゃないし。


ヘラ男が歩美の眼中になくてよかったよかった!


歩美の好みがヘラ男じゃないと知ってテンションが上がる。




「わたしのタイプ…可愛い子」

「だろうねえ。例えるなら?」




そう聞くと歩美の顔がポッと赤くなった。


ま、まさか歩美…。



恋してるの?それは恋する瞳!?



いや、私よ落ち着け。



どうせ相手はヘラ男じゃない。学校1の女たらしのヘラ男じゃないんだ。




てことは、歩美の好きな奴とはズバリ平凡な野郎だ。




「……くん」

「え?ごめん聞こえなかった」




くぅ、歩美照れすぎ!可愛いなあ!


悶える私に歩美は顔を赤くしながら答えた。




「折原楓くん」

「ぶっ!!」




その名前に私は食べていた卵焼きを吹き出した。


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