お試しカノジョ


簡単に言うと、こう。


夏子に男子Aが告白する。
しかし夏子はトキメかず、伊藤くんに告白されたときとの違いに気づく。


というもの。




「どう!?どう!?僕すごくない?歩美ちゃんどう思う!?」

「とても素晴らしいと思う」




瞳を輝かせて、純粋な少年のように言うものだから…。


却下、なんて言葉は出なかった。




「藤森さん、すっかり楓の毒牙にかかったね」




ボソリと伊藤くんが呟く。




「でもそんなので夏子ちゃんが俺のこと好きになるー?」

「多分!」




伊藤くんは顔をしかめる。


どうやらこの作戦には反対のようだ。




「藤森さんはなにかない?」

「わたし…?」

「そう。女の子の意見も聞かないとね!」




ニコニコ笑顔を絶やさない伊藤くん。


まあ、かっこいい。




「えっと……楓くんの考えも悪くないと思うよ」

「えー、どの辺りが?」

「好きな人から告白されるのと、興味ない人に告白されるのでは全然違う」




楓くんはわたしに拍手してくれた。

ちょっと嬉しい。
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