お試しカノジョ
「そういうもんかなぁ」
「それに…」
「それに?」
伊藤くんはじっとわたしの答えを待つ。
「夏子は男嫌いだから余計、好きじゃない人にはとことん興味ないよ」
「…なるほど」
「夏子と会話が続いてる伊藤くんはすごいと思う」
「本当?」
「だって、今まで男の子と話してる夏子なんて年に1回あるかないかだったもん」
特にクラスメートなんかは、全く話したことがなかった。
「歩美ちゃんっ!」
「な、なに?」
「僕を置いてけぼりにしないでよぉ!」
「ご、ごめん」
ぎゅっと抱き着いてきた楓くんに頬を緩める。
か、可愛い…っ!
しかも良い匂いする。
「ちょっと、それ俺に対する嫌味?」
「もう!冬樹のためにこの会議をやってあげてるんだからねぇ!」
「目の前でイチャつかれるのムカつく」
舌打ちをする伊藤くんは、ちょっと怖かった。
「じゃあ冬樹はなにか作戦あるのー?」
「そう言われるとね…うーん、ひとつだけあるのはあるんだけど」
お弁当を食べながらまだまだ会議は続きそう。