お試しカノジョ
「……怒らないから」
「ほんと?」
「嘘ついてほしいの?」
「…そういう言い方ずるいよね」
苦笑いするヘラ男。
「ヘラ男の方が前からずるいよ」
「………ねえ、それ」
私たちの横をバスが通り過ぎる。
あれは歩美たちが乗ってるやつだ。
そんなことをぼんやり思う。
「そのヘラ男って呼び方変えようよ」
「…呼び方?」
なにを言い出すかと思えば…呼び方?
ヘラ男がすでに定着してるから、今更変えるのは難しい。
「じゃあ……タラし、ヘラ助、悪魔。さあどれがいい?」
「それは照れ隠し?全部却下に決まってるでしょ」
個人的にはヘラ助が良い。
「ふゆき」
「……は?」
「冬樹って呼んでよ」
「なんで?」
ふゆき……無理。
「イトーじゃだめなの?」
「やだ。楓のことは折原呼びなのに俺だけヘラ男は嫌だ」
ムスッ、としてるヘラ男…ヘラ助?