お試しカノジョ
「早く繋ごうよ。もうすぐでバス停着いちゃう」
「い・や・だ」
そういうのは、もうちょっと仲が深まってからでもいいんじゃないかと思う。
私たちまだ高校生よ?
時間はたっぷりあるし……。
「なんならバスの中で繋ぐ?」
「もっとやだ」
「なら今しようよ」
「拒否ってんの分からないわけ?」
「今繋ぐのとバスで繋ぐの、どっちがいいの?」
でた。
究極の選択。
私にはどちらも無理。
……ハッ!まさか歩美はもう経験済み!?
いやでも、そんな…。
いやいや、手が早いと有名な折原が彼氏だから…。
「藤森さんは素直に楓と繋いでたんだけどなぁ」
「くっ!」
歩美とお揃い…。
ええい!もうヤケクソだ!
手でもなんでも繋いであげるわよ!!
私はガシリと、差し出している冬樹の手を掴んだ。
「………夏子ちゃん」
「なによ、繋いだわよ」
「いやこれさ」
呆れ顔の冬樹。
「これ、握手だよ…」
「……え?」
そう言われて握った手を見ると、確かに握手だ。
や、やってしまった……。
私は再び赤面する。
「…あははっ、照れて焦る夏子ちゃん結構可愛いし面白いからもう許してあげる」
「ななななによ!これは…その……そう
!あんた恋人繋ぎとも言わなかったから握手でいいやと思ったのよ!」
「ふっ…あはははっ!」
「ほっ、本当よ!?」
「分かった分かった」
「ちょっと聞いてるの!?」
笑いながら歩く冬樹に私も付いて行く。
そして笑いながら私の手を、今度はちゃんと恋人繋ぎで握った。
それに驚いた私だけど、冬樹は微笑んでいたので大人しく繋がれる。