お試しカノジョ
「あっ、じゃあこういうのはどうかな」
誰もいない教室に、校庭から聞こえる野球部の金属音が響く。
くぅ!
そういう青春みたいなのはいらないの。
特別良いムードとかじゃないんだから
青春的要素はいらないの!
「お試しカノジョ、どう?」
「………は?」
外の音に気をとられていて、すぐに反応できなかった。
なんて言った?
お試し?
カノジョ?
「試しに2ヶ月くらい付き合ってみる。それで俺に惚れたのなら、結果オーライじゃない?」
「オーライじゃないわよ」
「オーライだよ。だって西本さん、絶対俺のこと好きになるから」
清々しいほどの笑顔で宣言された。
どこまでナルシストなんだろうか、と思うより早く鼻で笑っていた。
「んなわけないでしょ。惚れるとかありえないから」
「わっかんないよー?」
「ないない。例え太陽が爆発して地球が木っ端微塵になろうとも、ありえないことだね」
絶対惚れる、という自信がどこからきているのやら。
あ、顔か。
「そんじゃあ…」
「なに?」
「二ヶ月後、俺に惚れてたらカノジョ続行。惚れなかったら別れる。どう?」
満面の笑みで言うヘラ男だが、私はその言葉に眉を寄せた。