お試しカノジョ




そう言うと、男は焦りながらも去って行った。


まったく、本当に好きなら下調べでもしてこい。


誰もいない教室で舌打ちしながら静かに席に座る。





昔いろいろあって、男が苦手になった。
というか嫌いになった。





喋るのも、目が合うのも、近くに来られるのも無理。


気持ち悪くて倒れそう。


それに、気持ち悪い男なんかよりも私には大切な大切な女の子がいる。


その子の側にいる私が男を嫌いなのは虫除けにもなるし、有難いことだった。



「それにしても、あの顔で告白とか」



もうちょっと磨いてからじゃない?普通は。


髪型だって整えて、洗顔とかしといてほしいもの。


ニキビだらけって……。


確かに、男も女も顔が全てじゃないが。


でも向こうは私の顔が好きになったみたいだし、私だってさっきの奴の顔をとやかく言う権利くらいあるだろう。


再び舌打ちをする。



「確かに、あの男子生徒と西本さんは釣り合うように見えないなぁ」



誰もいないと思っていた室内に響いた、男の声。
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