お試しカノジョ
そわそわ
もじもじ
いそいそ
キーンコーンカーンコーン
びくっ
パアアァ
「…夏子、お昼になった。早く行こう」
「ソウダネ」
私の前の席に座っている歩美は、その後ろ姿からでもウキウキしているのが
伝わってきた。
なんでそんなに嬉しそうに…。
私と食べるときはそんなんじゃないのに。
「裏庭、行こう」
「準備はやっ」
カバンを持って急かす歩美に私は拗ねる。
楓というタラシの可愛い系男子に負けた私は、元凶であるヘラ男に冷たい視線を送った。
「伊藤くん、夏子に笑ってる。本当は愛されてる…?」
「なわけない。あれは微笑みとかじゃなくて、おかしくて仕方ないって顔だよ」
私の顔が変だとでも言いたいの?
ふん、生まれつきこの顔なんですよ。
飛び抜けた美形と比べると、見劣りしますよそうですよ。
どうせ私の顔なんてヘラ男に比べればブサイクなんでしょ。
でも言うほどブサイクじゃないからね!
雑草並みのヘラ男に負けたなんて認めないからねっ。
「夏子?」
「い、行こっ」
歩美の手を引きながら教室を後にした。