お試しカノジョ
裏庭にはベンチや座るものがないので私たちは適当な地面に座り、待つ。
「先に食べないー?」
「でもまだ折原くん来てない」
「えぇー」
そこにヘラ男の名前はないのね。
それよりもはやく食べたい。
お腹がすいた。
ぎゅるるー、と鳴るお腹をさすりながらお弁当を開けた。
「夏子…」
「だってお腹すいたんだもん。別にいいよ、待たなくて」
こっちから約束したわけでもないしさ。
本当なら諭吉をもらいたいところだけど。
歩美が行きたいって言ってたし、そこはもう仕方ない。
しかし、そりゃ友達なら食べずに待ってるけど。
相手はヘラ男だよ。別にいいじゃないか。先に食べてたって。
「そりゃないよ、西本さん」
「ぐへっ」
後ろから声がしたと思いきや、頭の上になにか乗っかった。
「…ヘラ男」
「その呼び方やめてよ。俺には冬樹っていう名前があるんだから」
そう言いながらさり気なく私の隣に座った。
チクショー。
歩美の横に座ってるのに、わざわざ私の横に来るってなんなの?
普通前に座るもんじゃない?
向き合うもんじゃない?
向き合うのも嫌だけどさあ…。
「馴れ馴れしく話しかけないで。あとそれ退けて」
頭の上に乗っていたのは、奴のコンビニ弁当。
しかもその上から肘を置いているのだから重たい。