お試しカノジョ


「はあ?やっぱバカ?私がそんなことするわけないでしょ。死んでもやらない」

「えー、いいじゃないか」

「嫌、絶対嫌。キモすぎて死ぬ」




あーん、って恋人がよくやるあれのことだよね。


少女漫画とかである。


スプーンとかで差し出して…


あ、鳥肌が再び。




「折原くん」

「楓でいいよぉ、歩美ちゃん」

「か、か、楓…くん」

「うん。なにー?」




持っている箸がミシッと音をたてた。


私の歩美に…っ!




「夏子は男が苦手だから、そういうことはできない」

「えぇ!?そうなのぉ?」




萌え袖をしている手を口元に当て、心底驚きだとでも言いたげだ。


わざとらしい。


ヘラ男と親友っていうなら、そのことも知ってたんでしょ。


私が男苦手ってことくらい。


しかもなに、そのリアクション。


歩美と仲良くなろうっていう口実?


僕わからなぁい。そうなのぉ?もっと教えてぇ!!的な感じで歩美に近づこうと思ってるわけ?




「うーん、じゃあこういうのはどう?」

「あんたもう黙って…ッ!」

「はいあーん」




横を向いて喋った途端、開いた口に飛び込んだのは黒い箸。


私の箸は赤。


そして、その黒い箸をヘラ男が持っている。



ヘラ男の箸が、私の口に侵入した。




「ひっ、ひぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」



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