お試しカノジョ
お前の隣を歩くなんて西本家末代までの汚点になるかもしれないでしょ
キーンコーンカーンコーン
今日1日の学校終了を告げるチャイムが鳴り、帰る準備をする。
「歩美、帰ろー」
「え…?」
「ん?」
帰ろうと言うと、目をパチパチさせる歩美。
私、なにか変なこと言ったかな。
帰ろうって言っただけなんだけど。
「わたし今日委員会があるの」
「あっ、そうか」
「ごめんね」
歩美は確か風紀委員だった。
委員会なら仕方ないや。
うん、じゃあ仕方ないな……。
「分かった。今日も独りで帰るわ」
「あれっ、でも…」
「なに?」
首を傾げる歩美に、私も首を傾げる。
そして、スッと指をさす方向を見ると、私の顔は般若のように歪んだ。
「ゲッ」
「伊藤くんが待ってるから、一緒に帰るんでしょ…?」
私の後ろで、手をヒラヒラと振っているヘラヘラした奴がいた。
私は待ち合わせなんてした覚えはこれっぽっちもないんだけどな。
一緒に帰る約束をした覚えもないんだけどな。
「西本さん帰ろうよ」
まだ教室に残っている女子や、廊下にいる子たちの視線が突き刺さる。