お試しカノジョ
「ふざけんなマジふざけんな」
「恋人だから、一緒に帰るくらい良いでしょ」
「良くない。お前の隣を歩くなんて西本家末代までの汚点になるかもしれないでしょ」
「ほんと、減らず口だよね」
悪態をつく私に、顔色ひとつ変えない。
面白くないのと、一番嫌いなタイプとで自然に眉が寄る。
「夏子、また明日ね」
「えっ!……うん」
バイバイ、と言って歩美は教室を出て行った。
私はジロリとヘラ男を見た後、カバンを掴んだ。
「あ、一緒に帰ってくれるんだ」
「は?頭イかれてんの?病院にでも行ってきなさいよ」
早足で私も教室を出て、後ろから
「待ってよー」
と言いながら追いかけてくるヘラ男を無視した。