お試しカノジョ
「はぁ…ふぅ…」
日頃運動をしていないと、こうも簡単に息切れが。
バスに乗り込んだくらいではぁはぁ言ってるようじゃ、私もまだまだだ。
「夏子ちゃん、案外足速いんだね」
「…ぅえ!?」
ウィーン、とドアが閉まりバスが発車した。
私は後ろからした声に驚く。
「な、な、な、は?」
「置いてくなんて酷いなぁ」
私は心底げんなりした表情をする。
くっそ、どこまでもついくるこいつは、ストーカーかよっ。
「あ、あそこの席空いてるから座ろうよ」
「なんで着いてくるの」
握られた手を振りほどいて、周囲に迷惑にならないくらいの音量で話す。
「なんでだと思う?」
目を細めてニヤッと笑うヘラ男は本当に人をイラつかせる天才だ。
「それは俺もバス通だからでーす。ま、取り敢えず座ろう」
再び握られた手だが、またまた振りほどいてその席に座る。