お試しカノジョ


「はぁ…ふぅ…」




日頃運動をしていないと、こうも簡単に息切れが。


バスに乗り込んだくらいではぁはぁ言ってるようじゃ、私もまだまだだ。





「夏子ちゃん、案外足速いんだね」

「…ぅえ!?」





ウィーン、とドアが閉まりバスが発車した。


私は後ろからした声に驚く。




「な、な、な、は?」

「置いてくなんて酷いなぁ」




私は心底げんなりした表情をする。


くっそ、どこまでもついくるこいつは、ストーカーかよっ。



「あ、あそこの席空いてるから座ろうよ」

「なんで着いてくるの」



握られた手を振りほどいて、周囲に迷惑にならないくらいの音量で話す。



「なんでだと思う?」



目を細めてニヤッと笑うヘラ男は本当に人をイラつかせる天才だ。



「それは俺もバス通だからでーす。ま、取り敢えず座ろう」




再び握られた手だが、またまた振りほどいてその席に座る。



< 34 / 132 >

この作品をシェア

pagetop