お試しカノジョ


「へえ、意外だね」

「は?」




私は窓側に座った。


隣に座るヘラ男から、ほのかに香水が香る。




「てっきり俺の横には座らないのかと思ってたよ」

「ふんっ、私の家遠いの。立ってたら足が痺れるでしょ」

「俺が下りたら座ればいいじゃん?」




……それもそうだ。


あれ、なんでそんな簡単なことが浮かんでこなかったんだろう。


私バカ?
とうとう本格的にバカになった?




「てか、なんで乗り込んだのよ」

「俺もこっち方面だから」

「へー、そうですか」

「ちなみに夏子ちゃん家はどこ?」

「だからッ!」

「カップルが苗字呼びって逆に初々しさ満載なんだけど。もしかして夏子ちゃんは甘酸っぱい中学生くらいの恋愛のほうが好きだった?だったらごめんねぇ」




うっざ!こいつマジうっざ!


しかもこの距離!!


膝が当たりそうなこの距離!!




「で、どこ?」

「内緒っ、てへ」

「……ごめん、本気で吐きそうになったや」

「それを私はいつも体感してんの」




女の子らしさ満載で、人差し指を口に当てながらウインクしてやった。


我ながら今年1番のキモさだった。


こいつに、吐きそうになったと言われてカチンときたが。

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