お試しカノジョ
「で、夏子ちゃんは家どこ?これ何回も聞いてるけど」
「……」
「ほんっと可愛気ないよね」
「うるさい」
「ただ純粋に聞いてるだけなのにさ」
教えてやろうかやるまいか。
まあ、教えても問題はないと思う。
こいつは八木区と言っていた。
私が下りるバス停の4つ前だ。
それに私の家は田舎。バス停とバス停の間隔はけっこうある。
「………坂ノ上だけど」
そう呟いた。
けれど、返事はない。
あれ?と思って隣を見てみると、スマホをいじっていた。
「ちょっと!!あんた人に聞いててその態度はどうなのっ!?」
キッと睨みつける。