お試しカノジョ
暫くヘラ男のレベルやら手持ちのモンスターやらを見ていると、私の部屋が開く音がした。
「姉ちゃん、ジャージ返しに……なにニヤけてんの?キモ」
「は!?ノックくらいしてよ」
なんの予兆もなく開かれた扉。
我が弟の久志が、以前貸した青いジャージを手にして立っている。
「なんだよ。もしかして男とメールか?」
「んなわけないじゃん」
「でもさっきのニヤけ方は尋常じゃなかったぞ。キモすぎて引いた」
「知らん!早く出て行け!」
そう言ってクッションを投げつけるが、ひょいっとよけられてしまう。
入り口付近の床にジャージを置いて、ドヤ顔をしながら出て行った。
「………ニヤけてた?」
久志の思いがけない言葉に、呆気にとられた。
私が、ニヤけてた?
なにを見て?
ヘラ男のパズモン。
………ないわ。
私がヘラ男のことでニヤけるとかないわ。
変な事言わないでよね。